半身 サラ・ウォーターズ著

半身 (創元推理文庫)
1870年代、裕福な家庭の長女が女囚刑務所を慰問におとずれ、霊媒だという少女に会う、というお話。
残虐シーンはないんだけど、読後感想としては、残酷、グロテスク。普通は、1人くらいは人間らしいやさしい人物がでてきていいもんだとおもうんだけど、なし。そうでもないのかな?一人称の小説だから。
慰問婦人のマーガレットは老嬢、とかかれておりますが28歳であります。28歳でオールドミスの時代。ひえー、じゃあ霊媒の女囚シライナ17歳を少女とよんでいいものか。
彼女は顧客(心霊治療?)を傷つけたのと詐欺の罪で服役中なんだけど、顧客を乱暴したのは守護霊のピーターだと主張します。果たして、本当に守護霊なのか。だいたい、詐欺なのか本物の霊能者なのか。本物なら、この小説はホラーだし、詐欺なら推理ものなのよ。
マーガレットがかかえている問題とか、弟の妻との関係とかもあって、恋愛小説っぽい感じもあり。マーガレットの愛は盲目状態。でもって、自己中すぎ。マーガレットの母親も妹もすごく自己中。弟夫婦はまあわりといいやつっぽいですが、自分たちの家庭が一番主義。すごくマーガレットは浮いた存在で、家族の荷物なんですね。でもわがままなお嬢様ですから、彼女も自分の孤独にひたって勝手放題。
いやーもう、自己中心で身勝手なひとばっかり。刑務所の看守が普通の人におもえてくるね。
とにかくマーガレットは嫌な女でした。で、霊媒シライナはつかみどころがないです。霊媒だからなのか、演技なのか。
かなりラストが衝撃的でした。この裏切られた感はなにかに似ている。えーと、『ダビンチコード』とか『クリムゾンリバー』。といえば、感のいいひとには分かってしまうかも。すまん。
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他の人の読後感想もチェックしてみたけど、ほほー、「おもしろくなかった!」という意見はあまりなし。
ヒロインに感情移入していたのでラストショック!という意見に賛成。かなり引き込まれる内容ではあります。